【マレーシア通信No.12】
~ラマダン~
イスラム教の人は1年間に30日間、断食の義務があります。今年も6月6日から7月5日までがその期間でした。それは、ラマダン(Ramadhan)で断食の月という意味です。イスラム教カレンダーの中にある月の一つで、日本の7月とか8月というのと同じです。その月は、朝食、夕食の時間が決められています。また、昼食や途中の飲み食いはできません。いくら暑くても昼間は、水も飲めないのです。断食はマレー語でプアサ(Puasa)と言います。
なぜこのようなことをするのか不思議に思いましたが、苦しみを分かち合うためだと教えてもらいました。貧しい人、満足に食事もできない人の気持ちを理解するための修行のようなものだそうです。
同僚(イスラム教信者)に聞くと、ラマダン中は朝4時に起きて食事の準備をし、家族で朝食を摂ると話してくれました。お祈り時間を知らせるアザーン(午前5時半)の10分前までに食べ終わらないといけないそうです。また、夕食を食べてよい時刻はその日によって変わりますが、ほぼ午後7時20分以降です。夜の9時ごろまで食事をして睡眠をとり、次は4時半ごろに食事なので大変だと思います。
先日、友人がラマダンディナーに誘ってくれました。私がそこに到着したのは午後6時20分ごろでしたが、すでに多くのお客が椅子に座っていました。しかし、誰も食事を始めていませんでした。どのような料理があるのか見て回る人はいましたが、お皿に取る人はいませんでした。私も同じように食事を見て回りました。マレーシアの料理がたくさん並んでいて、どれもとてもおいしそうでした。スイーツもジュースも多くの種類があり、量もたっぷりでした。これまで食事に行って、お客全員がじっと待っている姿は見たことがなかったので不思議な感じがしました。
午後7時10分過ぎになると人々が動き始めました。そして、お料理をお皿に取っていきました。しかし、その日は食事を始めて良い時刻が午後7時16分だったので、それまでは食べ始めません。アザーン(お祈り時間のお知らせ)がモスクから聞こえ、その時刻になってほぼ一斉に会食が始まりました。お料理を取っていた人がみんな椅子に座り、同時に食事を始める光景も奇異な感じがしました。信者の方は食事前のあいさつをして、まずナツメを食べます。ナツメは胃に優しく、栄養があるからだそうです。その後は普通の食事風景となりました。
当日は白バイが10台近く駐車してあり、ホテル内に大勢の警察官がいました。不思議に思って聞くと、王妃様(ジョホール州)主催の催し物があるということでした。係りの人が友人と私を会場の中に入るように促してくれました。(関係者ではないのに!)
会場にはたくさんの丸テーブルが置かれ、列を作っている人たち、座っている人たちと様々でした。王妃様が、親のいない子、体の不自由な人、火事などの災害にあった家族等々を招待されていたそうです。その人たちは一列になって王妃様の前に進み出でていました。王妃様は一人一人に声をかけ、プレゼントを渡されていました。
私たちはその様子を間近で見ることができました。写真を撮ることもOKでした。友人はマレー人でバジュクロン、ツヅゥンを着用していたので奇異には見えませんが、半袖ブラウスに綿パン姿の私はかなり目立っていたと思います。しかし、王妃様の近くまで行って、写真を撮っても周囲の人はにこやかな表情だったので、そのことに驚いてしまいました。多民族のお国柄だから、どのような人種であっても受け入れてくれる寛容さがあるからでしょう。
テーブルには食事の準備がされていました。私たちは途中で退出したので見ていませんが、セレモニーのあとは、盛大なラマダンディナーが開催されたことと思います。
1年前には王様にお会いすることができ、今回は王妃様でした。ジョホールにずっと住んでいる友人も初めてのことで、とても喜んでいました。ラマダンのお陰で素敵な経験をすることができました。